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狼からの挨拶
俺は大正15年産まれ、歳の事を言うと我ながら恥ずかしいが、もう78にもなる。
78歳という年齢は、社会通念上、ごく特殊な社会を除けば一般的には老人と呼ばれる。
そう、俺はジジイだ。しかも、この身を賭してヤクザや右翼どもへ苦言を呈し、檄を飛ばす嫌なジジイだ。
かつて、世間の人々はこの俺を、「斬人斬馬」と称して恐れていた。要するに、人に触ららば人を斬り、馬に触ららば馬を斬る、刃物を持った狂犬という意味である。
それは、ある一部においては正しい。
確かに俺は、右翼になる前は、生まれ育った福島の郡山では”夜の市長”と呼ばれる一番の暴れ者だった。夜な夜な地元のヤクザの賭場へ行き、勝ったといっては金をわし掴み、負けたといってはツケにして荒らしまくり、そのおかげで大立ち回りも随分やった。
護國團に入り右翼になってからは、内部の綱紀粛正に大鉈を振るい、国のため義のために人を殺めることも辞さず、刃の上を渡り血の雨の下をかいくぐってきた。
世間様への恥を忍んで言えば、俺は前科12犯で、長いこと塀の中で国家公務員としてオツトメを果たしてきた悪党でもある。ああ、国家公務員っていうのは冗談だからな、本気にするなよ。
けれども、それは俺の一部分だ。
どんな政界や右翼、ヤクザの大物だろうと、信念を曲げず、怖じず、正面からぶつかっていった結果に過ぎない。
しかし、この40数年間、俺が命を賭して愛国活動に殉じて出た悲論はこれだ。
「右翼が国を救うことはできない」
何と空しく悲しい結論だろう。
しかし、まだ諦めてはいない。俺の心の中に愛国の炎は今なお熱く燃え盛っている。
そして、信念のためとはいえ自分が手をかけてしまった人々へ、償わなければいけない。
鎮魂と、愛し誇りに思うこの国のために、俺ができること。
それは、今まで敢えて黙して被っていた黒衣を脱ぎ去り、耳も目も塞がれて蚊帳の外に置かれていたと同然だった国民へ、少しでも多くの真実を語っていくこと。俺が数多くの修羅場の中から体得した暗黒の世界の実感を、あえて白日のもとに曝し、社会浄化に資するところばあればと願うのみである。
そして、この残り少ない命の灯が燃え尽きる前に、少しでも多くの若者に俺の志しを受け継いでもらうことを願ってやまない。
この国の未来を双肩に背負う若き人々よ。俺の五臓六腑を踏みにじって進め!
そのために、俺は荒野の狼たらんと護國團団長を辞して咆哮を上げる。
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